2009年9月1日火曜日

Over the rainbow : TP-7

破れたセールを片付けるのは辛い作業だったが、よいニュースもあった。 
RunnningSpinの一枚は縦に裂けたように切れていたので、補修の可能性がでてきた。 
裂けた部分をメジャーを何度も手繰りながらはかってみると、14メートル。 
両面からテープを張って補修するには最低でも30メートルのテープが必要。 
事前に準備しておいた、補修テープは20メートル。  あとは1.2メートルx1メートルの
大きな補修パッチがあった。 補修パッチをテープとほぼ同じ7.5センチ幅に切り取って
長さ1.2メートルの補修テープが10本完成、なんとか補修できそうだ。 
あとはきれいに張るだけなのだが。。。。 
全長が16メートルのヨットの上で20メートルのセールを補修することがどんなに大変か
想像できるだろうか。  しかも平らの部分は船内に入って何も置かれていないたった
畳2帖分ほどの床面しかない。  巨大なセールをコックピット入り口に押し込んで、切れている
部分を上から広げて、2帖分だけ平らにして、その部分にテープを張る。 張り終わったら、
テープの上をスピーンで擦って丁寧に空気を抜いていく。  きちんと張れたことを確認したら、
次の切れ目が平らになるように2帖分だけ手繰りよせる。  これを14メートルの傷全てを
カバーできるまで繰り返す。 そして表面がおわれば、同様に裏面にも全く同じ作業を
行うのだ。 空気が流れにくい船内での作業に汗が額から滴り落ちる。 

Watch交代もはさんでヨットを走らせていないクルーが交代で作業を
おこない、約4時間で作業が終了した。   


仙人スキッパーと山下さんが補修の作業を開始



船内の床に破れたスピンを押し込む


補修作業中の山下さんとりょう 張られたテープの上をスプーンを使って押さえていく。


ブルーのセール生地の上に縦一本の補修テープのラインは、痛々しくもみえるが
我々の4時間の作業の勲章でもある。   
さっそく、補修したRunning Spinをあげる。  
誰もが傷をかばうように、いつもよりやさしくセールをハリヤードで引き上げ、いつもより
丁寧にスピンシートを引き込んでいく。  
風がスピンにはらんで”ボンっ”と音がするが
異常もなくLEGLUSを、風下方向へとぐんぐんと引っ張ってくれる。 
わずか幅7cm足らずのテープがどこまで頑張ってくれるのかな? 
できる限り距離を稼いでほしい、祈るような気持ちでセールトリムを開始した。 




水平線を見渡すと、スコールがあちこちで降っているのが見える。 
そしてそれを太陽が照らすときれいな虹が見えた。   
この日はいくつのスコールと虹をみながら、Running Spinをトリムしたのだろう。
何事もなかったかのように、Running Spin は風をはらみ続けた。 


ヘルムをとるバウマンマッキーと。 後方にスコールが迫っているのが見える。 




Is that Big Island?
『どれくらい陸に近づいたら、目で確認できるんですかね?』
最年少クルーのうずがそんなことをいった。  
そういえばスタートしてから11日目、海しかみていない日が続いている。

『30マイルくらいでも、夏だと見えないんじゃないかあ』
 
『じゃあアレは雲ですね。 なんか白く光って見えたんけどねえ』

え、アレ?  雲じゃないの、あんなに高いところに陸は見えないよ。


などと会話していたが、我々が見ていたのは紛れもなく陸だった。
ハワイ島マウナケア山頂にある各国の天文観測所が白く光っていたのだった。

スタートして11日目、カリフォルニア時間で7月11日21時(ハワイ時間で18時)
とうとうハワイ島が肉眼でみえるところまでLEGLUSは来ていた。   
ログで確認すると、島までの距離はほぼ38マイル手前だった。 



雲の上からマウナケア山頂付近の観測所が見える。(尾根に白い建物が)


そしてその日のサンセット。 ゴールまでは150マイルを切っている。  
これがレース中に見る最後のサンセットになるかと思うと、格別に見えた。 
そういえば、きれいに海に沈んだサンセットは
今回のレースでは見ることができなかった。 それともサンセットをじっくり見る暇もなかったのだろうか




ハワイ島の約30マイル手前に近づいた時点でLEGLUSは進路を
北西290度に変更。  ハワイ諸島にぶつかって北に進む海流に乗ってスピードを増
しながらマウイ、モロカイの2島をぎりぎりで交わす作戦だ。  
日が暮れてからは、ハワイ島の島影にいくつか街の明かりがみえた。 
夕方にみた11日ぶりの陸と同様に、夜にLEGLUS以外からの明かりをみるのは
久しぶり。 WatchOffになっても、まだデッキ上で明かりを見ていたい、
そんな気分だった。 

そして1時間もしないうちにマウイ島がみえてきた。 もう夜中だというのにはっきりと
島影がみえる。 距離も近いこともあり、ハワイ島より町の灯りは明るくみえた。   
昨日までの星しか見えなかった夜の帆走とは大違いだ。  
あかりのひとつひとつが人の活動している場所から届いていると
思うと、そこで生活している人達の平和が見えるようだ。  

フィニッシュ前100マイルコールをマウイ島の東端より北15マイル地点よりおこなう。 
ここからのコールでは自艇のポジションに加えて、フィニッシュの予測時間、
ETA(Estimated Time of Arrival )を伝える義務がある。  
現在の艇速から予想した到着時刻、ハワイ時間13日午前9時半を伝える。
レポートした後でも、本当にハワイ時間の午前中にダイヤモンドヘッドが見える位置に
いるのだろうか?自問してしまうような不思議な気持ちだった。 
早くフィニッシュしたいが、本当に4000Kmもセーリングしてきたのだろうか? 
実感が沸かなかった。 

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