2009年8月27日木曜日

Great Spinnaker run : TP-5

夜のワッチでもそれほど着込まずとも過ごせるようになった5日目くらいから我々はレースの中盤に入っていた。
いわゆるスロットランだ。 (最初に入ったスロットを維持しながら、風に合わせてなるだけ西へスピンネーカーで
艇速をあげていく。 )  10ノット以上の風が安定して吹くことも一日に何度もでてきた。  
スピンネーカーをトリムして、LEGLUSのスピードが上がることに専念していると、4時間のウオッチはあっという間。   
8ノットオーバー、ときには10ノットを超えるようになった艇速にもなれてきた。  
よく考えてみると、サンフランシスコベイでセーリングしているときなどは
これだけ艇速をあげて一方向に走るとあっという間に陸地にぶつかって、船の向きを変更しなければならない
というのに、LEGLUSはほぼ同じ角度でもう48時間以上も走りつづけている。 
そう、これがヨットマンが憧れる追っ手のスピンラン。  『飽きるほどずっと同じ角度で走れるよ』 
TP参加が決まったときに誰かに言われたことを思い出していた。   
もう陸からは数百マイルも離れたというのに、海上はまるで湾の中にいるように
うねりも小さくLEGLUSは快調に走っていた。 




ライバルの位置をみると、Bengal7が我々よりも北のコースを快調に飛ばしていた。 
先行していたCipangoに今日中に追いついてしまう勢いだ。 
スタート時には不安定だった太平洋高気圧が、その後順調に発達して、北側のコースにもいい風が
吹き始めていた。  Bengal7のナビゲーター森さんの見事な読みだった。  
南コースもいい風が吹いているようで、TachyonIIIも距離を伸ばしていた。 
同じ南コースで帆走するCriminal Mischiefが凄い、TachyonIIIより南にコースを
おとしてさらに早い艇速がでているようだった。 遠回りになるとはいえ、経度ではすでに
40マイル以上は西に先行しクラストップに立っていた。  
我々のライバルはWasabi、ほとんど同じ経度でLEGLUSの南側50マイルを帆走中だ。
レースはまだ中盤に入ったばかり、スピントリムの一瞬一瞬がライバル艇に追いつくチャンス。
そんなことを考えながらシートをトリムしていた。   
ふと見ると、シートをトリムするウインチドラムの周りのデッキはうっすらとシートの色に染まっていた。 
レース用に準備した新品のスピンシートがドラムで擦り切れて、そこからでたシートの繊維だった。
手にもマメができ、不快になってきていたがそんなことを気にしてはいられない。 
なんとか見えないWasabiに追いつきたい。 クルー全員そんな思いだったはず。 



ウインチドラムのまわりがシートの繊維でうっすらと青く染まる


さらに風はまわりTWA(True Wind Angle = 真の風向)で150度前後に推移していた。
これはほぼヨットの真後ろから風を受けて進む状態。 風速も15ノットオーバー、艇速も10ノットオーバー
で帆走していた。 セールもついにRunning Spin といって、一番風下に向かって進むセール
にかわっていた。   艇速はさらに増し、最高艇速13ノットだ、14ノットだ、ウオッチのたびに記録が更新
されるくらいに快調に進んでいた。  そしてライバルのWasabi もとらえて、順位をひとつあげる
ことにも成功した。 
海の色が変わったのもこの頃。 太陽があがると紺碧の海。 
雲も入道雲、すっかり夏のそれに変わっていた。   


7月8日(スタート7日目)午後2時過ぎ、ついにハーフポイント通過。 
ダイヤモンドヘッドまであと1100マイルとなった。 


Navigationソフトがどのセールがベストなのかを常に教えてくれる。 
カラーで色分けされたのがLEGLUSが積んでいるセールの種類。 
右側の白丸が風向と風速からNaviソフトが判断するセールをポイントする。 


時には手計算でゲインできる距離を計算。 


艇速がでるように、風に合わせて帆走しながらセールを入れ替える作業を何度も行う。

2 件のコメント:

  1. 臨場感たっぷりですね。

    しかも、勉強になります!

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  2. ありがとう。
    こんな長編になるとは思いもよりませんでした(笑)

    ヨットの仲間もヨットを知らない人も読むだろうと思って
    両方のバランスをとりながら書いてます。  

    もう少しで完了。 少々お付き合いください。

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